相続放棄後に受領できる給付かは「権利の帰属」で判断する
相続放棄をした者は、民法上、初めから相続人ではなかったものとして扱われます。
しかし、被相続人の死亡を契機として遺族に支給されるすべての金銭が相続財産になるわけではありません。
実務では、
「被相続人に帰属していた財産を承継するのか」
それとも、
「死亡を原因として遺族自身に新たな受給権が発生するのか」
を区別する必要があります。
公的遺族年金は遺族固有の受給権
遺族基礎年金、遺族厚生年金は、国民年金法・厚生年金保険法に基づき、一定の要件を満たす遺族に支給される給付です。
相続によって被相続人から承継する権利ではありません。
したがって、相続放棄をしていても、年金制度上の受給要件を満たす限り、遺族年金を請求することができます。
相続放棄の有無と、
・生計維持関係
・配偶者、子等の身分関係
・被保険者の加入状況
・保険料納付要件
など、遺族年金の受給要件は別に判断されます。
また、国民年金・厚生年金等に基づく遺族年金は、原則として所得税・相続税ともに非課税です。
死亡退職金は支給規程の確認が重要
死亡退職金については、公的遺族年金と異なり一律には判断できません。
勤務先の就業規則、退職金規程、労働協約等によって、
・誰が受給権者となるか
・受給順位がどのように定められているか
・民法上の相続人と同じ順位なのか
・会社独自の遺族順位なのか
を確認する必要があります。
規程によって受給権者が相続制度とは別に定められている死亡退職金については、その遺族固有の権利と評価され、相続放棄の影響を受けない場合があります。
反対に、生前すでに被相続人に帰属していた退職金請求権などについては、相続財産としての検討が必要になります。
相続放棄案件では、死亡退職金という名称だけで結論を出さないことが重要です。
税法上は死亡退職金が「みなし相続財産」になる
民法上の帰属と相続税法上の取扱いは必ずしも一致しません。
被相続人の死亡によって支給される退職手当金等のうち、死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続税法上、相続または遺贈によって取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。
相続人が取得した死亡退職金には、
500万円×法定相続人の数
の非課税限度額があります。
ただし、相続放棄をした者が死亡退職金を取得した場合、その者にはこの非課税制度は適用されません。
なお、非課税限度額を算定する際の「法定相続人の数」については、相続放棄がなかったものとして人数を計算します。
「未支給年金」と「遺族年金」も区別する
亡くなった方が年金受給者であった場合には、死亡月までに支給されるべきで未払いとなっている「未支給年金」が存在することがあります。
これは通常の遺産として相続するのではなく、年金法令上一定の要件を満たす遺族が自己の名で請求する制度です。
遺族年金と未支給年金は別制度ですので、相続開始時には双方の有無を確認しておくことが重要です。
相続放棄案件では給付ごとの整理が必要
被相続人の死亡後に受け取る可能性のある金銭については、
生命保険金、死亡退職金、公的遺族年金、未支給年金、預貯金など、それぞれ法的性質が異なります。
相続放棄を検討している場合には、「死亡後に受け取るお金」という理由だけで一括して判断せず、受給権の根拠を確認する必要があります。
アーク行政書士事務所では、
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を通じて、個別の相続案件をサポートしています。
相続放棄と死亡退職金・遺族年金の関係で判断に迷う場合は、受領や財産処分を行う前に整理することが重要です。
