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任意後見契約はいつ効力が生じる?任意後見監督人選任までの実務

任意後見契約締結=任意後見開始ではない

任意後見制度を利用する場合、本人に十分な判断能力がある段階で、将来の任意後見人となる者との間で任意後見契約を締結します。

任意後見契約は公正証書によって作成する必要があります。

しかし、公正証書を作成した時点で任意後見人の代理権が発生するわけではありません。

任意後見契約の効力が生じるのは、本人の判断能力が不十分となった後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時です。

契約締結から任意後見開始までの流れ

実務上は、概ね次の流れになります。

① 本人に十分な判断能力がある段階で任意後見契約を締結

② 公正証書を作成し、任意後見契約を登記

③ その後、本人の判断能力が低下

④ 家庭裁判所へ任意後見監督人選任を申立て

⑤ 家庭裁判所が任意後見監督人を選任

⑥ 任意後見契約の効力が発生

⑦ 任意後見受任者が任意後見人として職務開始

このため、契約締結から任意後見開始まで数年、場合によっては十年以上の期間が空くことも考えられます。

契約締結中は「任意後見受任者」

任意後見契約締結後、任意後見監督人が選任されるまでの間、将来任意後見人となる予定の者は「任意後見受任者」という立場です。

この段階では、任意後見契約に基づく代理権を行使することはできません。

家庭裁判所が任意後見監督人を選任した後に、初めて「任意後見人」となります。

したがって、

「任意後見契約をしているから預金を自由に管理できる」

という理解は正確ではありません。

任意後見監督人選任を申し立てるタイミング

本人について認知症等の症状が生じたとしても、「認知症という診断が付いた」という一点だけで任意後見開始が決まるわけではありません。

重要なのは、精神上の理由によって本人の判断能力が不十分な状態となっているかどうかです。

本人の生活状況、財産管理状況、医師の診断等を踏まえて、任意後見監督人選任の申立てを検討します。

本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者などが申立てを行うことができます。

任意後見人の権限は契約で定めた範囲

任意後見人は、本人に代わって何でもできるわけではありません。

任意後見契約の際に作成した代理権目録に定められた事務について、本人を代理します。

例えば、

・預貯金の管理
・定期的な支払い
・介護サービス契約
・医療費、施設費等の支払い
・不動産の管理
・行政機関等への一定の手続き

などです。

どの範囲まで代理権を付与するかは、契約作成時の重要な検討事項です。

なお、任意後見人には、法定後見における成年後見人のような一般的な取消権はありません。

契約から発効までの「空白期間」をどうするか

任意後見だけを契約した場合、本人の判断能力が十分な期間は、任意後見人予定者に任意後見契約上の代理権はありません。

そこで実務上検討されるのが、

・見守り契約
・財産管理等委任契約
・任意後見契約

を組み合わせる設計です。

例えば、

第1段階 見守り

本人が元気な時期は、月1回程度の電話や面談などで健康状態・生活状況を確認します。

第2段階 財産管理委任

判断能力はあるものの、身体機能の低下、入院等によって金融機関への外出や日常的な支払いが難しくなった場合には、財産管理委任契約による支援を行います。

第3段階 任意後見

本人の判断能力が低下した場合には、任意後見監督人の選任を申し立て、任意後見へ移行します。

このような設計は、一般に「移行型」と呼ばれることがあります。

任意後見監督人による監督

任意後見開始後は、任意後見人の事務について任意後見監督人による監督を受けます。

任意後見監督人は、任意後見人から財産管理等について報告を受け、適正に職務が行われているかを確認します。

任意後見監督人には、家庭裁判所の審判によって本人の財産から報酬が付与されることがあります。

したがって、任意後見制度を利用する際には、将来の監督体制や継続的な費用についても説明を受けておくことが重要です。

「いつ始めるか」まで契約時に考える

任意後見契約では、

「誰を任意後見人にするか」

だけでなく、

・判断能力低下を誰が把握するのか
・誰が任意後見監督人選任の申立てにつなげるのか
・それまでの財産管理をどうするのか
・任意後見開始後にどの範囲の代理権を与えるのか

まで検討しておくことが重要です。

アーク行政書士事務所では、

・見守り契約書の作成
・財産管理委任契約書の作成
・任意後見契約内容の整理
・代理権目録の作成支援
・公証役場との事前調整
・遺言、公正証書等との一体的な終活設計
・必要に応じた司法書士、弁護士、税理士等との連携

を通じて、契約締結時から将来の任意後見開始までを見据えた準備をサポートしています。

任意後見は「契約書を作って終わり」ではありません。元気な時期から判断能力低下後まで、誰がどのように支援するのかをあらかじめ設計しておくことが重要です。

2026.10.03